第68回税理士試験の法人税法を合格した際の答案を復元しました。
合格ライン等の参考にしてみてください。
本試験問題の構成
第68回税理士試験の法人税法の問題の構成はこのようになっています。
【第一問】理論問題
問一 ○×問題
⑴ 評価損の取り扱いの原則的な処理を簡潔に
⑵ 資産の評価損が認められる特定の事実を答えるとともに資産の区分ごとにその事実が定められているものはその事実を簡潔に
⑶ 次の1から4の評価損が当期の損金の額に算入されるか(理由も含めて)
1 生産過剰による時価の下落にともなう評価損
2 台風の被害を受け、浸水による商品の著しい損傷にともなう評価損
3 売買有価証券5,000,000が期末において3,500,000に下落したことにともなう評価損
4 機械装置が旧式化したことにともなう評価損
問二 ベタ書き問題(欠損金の繰越控除について)
⑴ 制度の対象となる中小法人等の意義について簡潔に
⑵ 制度の概要について、中小法人等とそれ以外に分けて記載
⑶ 制度の適用要件を簡潔に
【第二問】計算問題
問一 役員給与
⑴ みなし役員、使用人兼務役員の判定
⑵ 役員給与の損金不算入額(1項)の計算
⑶ 常務取締役に昇格した者に支給する賞与を損金に算入するための方法を説明
⑷ 2項基準額による損金不算入額の計算
問二 減価償却
主な論点・・・上棟式、登録免許税を取得価格に含めるか、借入金利子の取り扱い、耐用年数の見積もり、資本的支出
問三 グループ法人税制
⑴ 完全支配関係の有無の判定(理由も含めて)
⑵ 土地、株式について税務調整を要するかの判定
⑶ 建物、株式について税務調整を要するかの判定
⑷ 土地の買い換え、完全支配関係がある法人間の取引で税務調整を要するかの判定
問四 問一から問三までの税務調整に基づき、別表五(一)の作成
詳しくは、国税庁HP 出題のポイントをご覧ください。
筆者の答案復元結果を公開
はじめに、私の答案復元方法をご紹介します。
試験中の余った時間で、計算の主要な数値を全て書き写し
理論問題については、試験後すぐに、どこにどんな理論をどのように書いたか全て思い出して書き写す
それでは公開していきます。
上記の問題の構成と見比べながら進めていただくことをオススメします。
【第一問】理論問題
問一
⑴ 評価損の損金不算入、帳簿価額の減額がされない旨ベタ書き
⑵ ・物損等の事実 棚卸資産(災害による著しい損傷、著しい陳腐化、その他特別の事実) 固定資産(災害による著しい損傷、その他一定) 有価証券(著しい価額の低下の判定、その他一定)・会社更生による評価損 ・民事再生による評価損 ・売買目的有価証券の評価損 全てベタ書き
⑶
1 損金× 物損等の事実に該当しない
2 損金〇 災害による著しい損傷
3 損金× 著しい価額の低下なし(50%判定)
4 損金× 旧式化は物損等の事実に該当しない
問二
⑴ 期末資本金1億円以下(期末において大法人による完全支配関係があるもの等を除く)
⑵ 損金算入、損金算入限度(中小、それ以外分けて記載)、損金算入の限度の特例、欠損金額の意義 それぞれベタ書き
⑶ 欠損金額が生じた事業年度で青色申告書である確定申告書を提出(申告要件)、確定申告書等に一定書類を添付(手続要件)
【第二問】計算問題
問一
⑴ 95%>50% ∴同族会社に該当、B=兼務役員、C=役員、E=みなし役員、G=兼務役員
⑵ 1項損金不算入額 A 550,000 D 100,000
⑶ 臨時改定事由から一か月経過する日までに事前確定届出給与に関する届出を納税地の所轄税務署長に提出
⑷ 2項損金不算入額 実質基準で2,600,000
問二
本社事務所 調整なし 工場建物 見積15年 超過 8,102,947 エレベーター 見積13年(159月) 超過 455,200
問三
⑴ ①完全支配関係なし ②甲・乙・丁 ③ 記載せず
⑵ K土地 調整なし L建物 繰入7,200,000 戻入150,000 M株式 繰入4,000,000
⑶ 戻入7,050,000 、調整なし、調整なし
⑷ 認定損40,000,000 積立超過17,250,000 繰入38,000,000
問四 (最終値のみ記載)
L建物 0 M株式 △4,000,000 J建物 8,102,947 エレベーター 455,200 P土地 △38,000,000 圧縮積立金 40,000,000 圧縮積立金認定損 △40,000,000 圧縮積立金積立超過 17,250,000
自己採点の結果
二大予備校での自己採点結果を記載します。
予備校 | ボーダー | 合格確実点 | 筆者の点数 |
大原 | 理論 38点 計算 25点 合計 63点 | 理論 44点 計算 30点 合計 74点 | 理論 39点 計算 27点 合計 66点 |
TAC | 理論 36点 計算 32点 合計 68点 | 理論 44点 計算 38点 合計82点 | 理論 39点 計算 29点 合計 68点 |
大原・TACいずれも、ボーダー以上、確実未満となりました。
第68回税理士試験 法人税法の総評
まず、一言でまとめると、理論は簡単すぎて失笑。スピンオフとか組織再編とか必死に覚えたんなんやったんという問題でした。
そして計算は、難しすぎて失笑。習って無い論点多数。P7の出資関係図なんて、見た瞬間冷や汗止まりませんでした。
それぞれ詳しく掘り下げていきます。
まず理論ですが、端的に言うと、40点近くはとらないと厳しい問題、かつ、Aランク×Aランクなので、どこまで精度を高く書けるか、他の人が書けないところまで書けるかが問われていた気がします。
それはさておき、Aランクの評価損とAランクの欠損金を出題する作問者のセンスを問いたくなりました。Aランクだけの出題だと差がつかないのも当然ですよね。
私は他の受験生と差をつけるために評価損が認められる事由を、本来物損等の事実だけで良いところ、会社更生、民事再生、売買目的有価証券の評価損の事実まで全て書いたので本当に手がつるかと思いました。。。
真偽はわかりませんが、高得点勝負の理論問題で、○×の答えをミスしたら、足切りを食らっていた可能性もありましたね。。
計算は、本当に頭を抱える問題が多数でした。見積耐用年数を簡便法でするかどうかの判定、持株会の取扱い、完全支配関係がある法人間の特殊な取引、これらは私が通っていた大原では未学習だったのに対し。TACでは全て学習済みだったとのことです。
なので、この年は、TACが有利だと言われていました。 実際私が合格しているので予備校は関係ないことは証明していますが。。。
また、計算においては、「加算・減算」を明記する指示のような、地味に時間を削るトラップも仕掛けられていました。
総じていえば、理論の点数をいかに上げ、計算は基本的な問題をいかにとりこぼさないか、で明暗が分かれた試験だったと思います。
まとめ
税理士試験最難関ともいわれる法人税法。
やっぱり大切なのは基礎だということを、本試験で身をもって体感しました。
人より難しい論点ができることも大切ですが、何より大切なのは、周りの受験生が正答する問題を片っ端から正答すること。
私の答案復元の結果を参考に、法人税法の試験に励んでいただけると幸いです。
法人税法の合格のイロハについては、税理士試験 法人税法合格の為に必要な勉強時間【筆者の実績も公開】や法人税法 大原とTACどちらで受講すべきか【東の神 vs 西の神】も参考にしてみてください。
それではっ!