今回は、官報合格と大学院免除の終わりなき議論について
つらつらと持論を述べてみたいと思います。
先日私はこんなツイートをしました。
税理士試験を5科目とるか、大学院で2科目免除するか、答えのない議論ですが、
5科目とって大学院で論文も書いた私は、
5科目とった4年間より、大学院の2年間の方がよっぽど苦しかったです。
修士論文=お偉いさんが作った条文の問題点を探していく答えのない作業
→並大抵の努力ではできない。
— じぇいりし@25歳税理士投資家ブロガー (@Liveawiselife) 2020年5月17日
ツイートの関係で140字に収めないといけませんでしたので、本当に言いたいことだけを切り取った感じです。
この点に関してもう掘り下げます。
まず、私の受験歴を簡単にご紹介しておきます。
私は、簿記論・財務諸表論を合格したタイミングで、
税理士試験の闇をうわさ話で知り、怖くなって大学院免除を選択しました。
しかし、それでは諦めきれず、大学院1年目で消費税法、2年目で法人税法を合格しました。
そして大学院卒業後に相続税法を合格し、晴れて官報合格という流れです。
このように、5科目合格し、かつ大学院で修士論文を書いた人は日本中探してもそこまで多くはないと思います。
こんな私ですが、税理士試験の4年間で5科目をとることより、大学院で修士論文を2年間かけて執筆することの方が遥かに苦痛でした。
なぜなら、修士論文というのは、お偉いさんが作った条文の問題点を探し、それに対する解決策を導き出していくもの。
言ってみれば、答えのないゲームです。
そもそも、偏差値底辺の高校を卒業したような私みたいな若造が、「この条文は間違っている!」というのは
はっきりいってお門違いにも程がありますし、間違いを指摘する余談を許さないくらい、条文は精密に作られています。
もちろん、毎年改正があるということは何らかの不備があったり、時代に馴染まなかったりということは往々にしてあるのですが、
私レベルから見ると、「条文はすごいな、良くできているな」と感動させられるばかりです。
それに比べて、税理士試験は予備校から問題が出され、それに対する解答が用意されている。
そして予備校が出してくる問題をほとんどクリアできるようになれば、自ずと合格も見えてくる。
つまり、ある程度答えが見えているゲームなのです。(試験制度のブラックボックス云々は置いといて。)
料理に例えると、カレーを作るときに、自分で考えて作る(論文)か、ネットでレシピを検索し、レシピに沿って作る(試験)か、のような違いです。
私のように、まだまだ思考力も知識も低い人間にとっては、自分で一から考えて何かを作り出すということのハードルが正直めちゃくちゃ高かったです。
なので、上記のツイートのように、5科目とった4年間より、大学院の2年間の方が苦しかったという結論に至りました。
で。ここからが本題です。
官報合格、大学院免除のメリット・デメリットは税理士試験 院免(大学院免除)という選択肢という記事でも解説していますが、
税法の制度をざっくりとおさえて、条文を丸暗記する順位を競うだけのような試験よりは、
大学院で、実際の条文・税務の世界で著名な方の体系書・様々な判例を考察して修士論文を書き上げていくことの方が
正直、税理士としての仕事に一番近いと思いますし、将来的にも役立つことだと感じています。
また、「法律家」としての税理士を育てるのにも大学院の学びは本当に役に立つといって間違いありません。
ただこの議論は、あくまでも税理士になる「過程」で、「修士論文書いて、はい終わりっ!」という、
一見すれば「逃げ」を選んでいるように見えてしまうことが批判を生んでしまっているのだと思います。
税理士として働きだしたら、試験のような実務チックな勉強をすることも、大学院のような法律チックの勉強をすることもどちらも大切であることには間違いありません。
どちらも経験した立場だからこそ言えますが、大学院で修士論文を書いて院免除で税理士になることは「逃げ」でもなんでもないと思います。
「院免除って楽やろ」と思う方がまだまだたくさんいますが、正直言ってかなり過酷です。
簿記論・財務諸表論の会計科目で苦しんでいる人が税法科目に進んで爆死するように、
簿記論・財務諸表論で苦しんでいるレベルだと大学院でも、留年したり、論文が通らなかったりする可能性が高くなると思います。
何が言いたいというと、
大学院免除で税理士になる人は、実力はあるが試験に合格できない事情(子育て・仕事・その他)があっただけのことであって
そういう方については、ある一定程度の品質は担保できてるでしょ。ということです。(個人的な意見ですが)
ただ、ここで私が思うことは、「2科目免除で、しかも税法1科目はなんでも良い」というのは流石にやりすぎかなと。
税理士試験で選択必須科目として所得税法、法人税法いずれかの合格義務を課している以上、
大学院でも簿・財+選択必須科目(所or法)とするのが道理じゃないかなと思います。
または、選択必須科目をとらないのであれば、簿・財+2科目の合計4科目合格を必須とする。なども考えられます。
そうでもしなければ、ただでさえ受験者数が減って競争率が高くなっている税理士試験なので
数年後には、試験合格での登録者を、院免除での登録者が逆転し、試験制度が崩壊することも危惧されます。
私はどちらの苦しみも経験している立場なので、国税庁に抗議しようというような考えは一切持っておりませんが、
「税理士になる方法といえば、院免除が主流だよね!」という未来はなんか違うと思うので、
私の考えが一人でも多くの方に届くことを願うばかりです。